国立競技場の概要

| 設計 | 隈研吾建築都市設計事務所、梓設計 |
| 施工 | 大成建設JV |
| 構造 | S造(一部SRC造など)、地下2階地上5階 |
| 竣工 | 2019年 |
| 住所 | 東京都新宿区霞ヶ丘町 |
| アクセス | 都営大江戸線国立競技場駅、JR総武線千駄ヶ谷駅 |
国立競技場は、2020年(2021年)に開かれた、東京オリンピックのために建設されたスタジアムです。設計は隈研吾建築都市設計事務所であり、周辺の豊かな緑に馴染む、木材を基調としたデザインが特徴です。この記事では、このスタジアムの魅力と、デザインの特徴を詳しく紹介します。
国立競技場の構造
日本伝統の軒庇

木製の格子を備えた軒庇は、このスタジアムの意匠に関して、重要な役割を担っています。木製の格子は、設計者の隈研吾さんが得意としている手法で、伝統的な格子を時代に合わせてアレンジされたものです。木材は軒裏のみに設置されており、雨による劣化を防いでいます。また使用される木材は、防腐・防蟻処理が施されています。
軒庇は建物から張り出すような構造で、外周部のテラスを直射日光や雨から守る役割があります。軒庇を適切に張り出すことにより、外からは木製ルーバーと植栽による印象的なデザインと、テラスを守る機能性とを両立しています。

高さを抑えた屋根構造

国立競技場は、周辺環境との調和を考慮し、高さを抑えた意匠設計がなされています。屋根は中心部が高くなっているものの、全体的にはほとんど平らな形になっています。この屋根形状を実現するために、観客席の大屋根に工夫があります。
大屋根は鉄骨と木材とを組み合わせた、混構造によるトラス構造が採用されています。鉄骨は十分な強度と耐久性を確保するのに役立っています。また木材を使用することにより、観客席で木材のぬくもりや質感を感じることだけでなく、約60mの片持ち屋根の軽量化にも役立っています。木材と鉄骨の混構造は、鉄骨単体の場合と比べて、地震や風などの短期荷重による変形を抑えるのに有効なようです。大屋根は、2手に分かれて180°ずつ施工されました。限られた工期の中で、高い精度が求められる難易度の高い工事でしたが、屋根ユニットをあらかじめグラウンドで組み立てることで実現しました。
プレキャストコンクリートの利用
このスタジアムの施工を請け負った大成建設は、プレキャストコンクリートを得意としています。プレキャストコンクリートを基礎や観客席に用いることにより、工期短縮と品質確保を実現しています。現場打ちコンクリートに比べ、現場での作業が少ないため、大規模で工期の短い施工に向いています。
地震への対策
このスタジアムには、地震への対策として制振構造が採用されています。下層階を柔らかく、上層階を堅くすることにより、少ない設備で効果的に揺れを抑えています。下層階は集中的にオイルダンパーを設置し、効率よく揺れを吸収しています。反対に上層階は、鉄骨ブレースとスタンドのSRC構造により変形を抑えています。この工法は、大成建設で「ソフトファーストストーリー制振構造」と呼ばれ、主にペンシルビルで用いられている工法です。
参考:https://www.taisei.co.jp/MungoBlobs/131/16/K00F59.pdf
木材の利用
国立競技場では、多くの木材が使用されています。軒庇のルーバーに用いられている木材は、とても印象的ではありますが、木材使用量のごく一部に過ぎません。使用されている木材の大部分は、観客席の大屋根に使用されています。大屋根に用いられている木材は、スギとカラマツで、どちらも集成材です。体積ベースで鉄骨よりも多く用いられており、意匠としても優れています。
軒庇に用いられている木材は、47すべての都道府県から調達されています。基本的にはスギが用いられており、沖縄県のみスギが自生していないことから、リュウキュウマツが用いられています。木材はそれぞれ産地の都道府県・地方ごとに分けて用いられています。
植栽

外周のテラスには、植栽が配置されています。この植栽は、面積としてはあまり大きくは無いですが、十分に緑を感じられます。途中にはベンチが設置されており、休憩をとることができます。最上階は「空の杜」と呼ばれ、緑を感じられる散歩道となっています。
上の写真に写っている斜めの柱は、SRC柱で白に塗装されています。塗装により、コンクリートの無機的な質感が無く、植栽と調和が取れています。


