複合開発について
複合開発とは、オフィスや商業施設・ホテル・住居など、様々な機能・用途を合わせた開発のことです。一般的な開発では、オフィス単体・住居単体のように、単一の機能を1つの地域、1つのビルに詰め込みます。街中心部のオフィスビルや郊外のベッドタウンなどです。単一の機能を詰め込んだ大規模オフィスビルでは、スケールメリットが得られる利点があります。しかし、近年では様々な機能・用途を合わせて開発する複合開発の良さが見直されてきています。では、複合開発のメリット・デメリットを見ていきましょう。
複合開発のメリット
メリット1:通勤ラッシュを緩和
複合開発が普及すると、通勤ラッシュが緩和されます。従来~現在では、郊外のベッドタウンと街のオフィスとを、毎日往復しています。多くの人々が同じ時刻、同じ方向に移動するため、当然電車や路線バス、道路は混雑します。通勤ラッシュをさばくために、電車の車両を用意したり、駅を拡張したり、道路の斜線を増やしたりする必要があります。お金をかけて増やしたインフラは、お昼や休日にはオーバースペックです。加えて、混雑する列車の反対方面の列車や、混雑する道路の反対車線は、たいていがガラガラです。このように、通勤ラッシュは無駄が多いのです。
メリット2:昼・夜の人口変化が小さい
現在の多くのオフィスビル街では、夜になると人がほとんどいなくなります。反対に、住宅街では昼に人がいなくなりがちです。このような地域では、インフラ整備にムダが大きく、また防災や防犯の面からもあまりよくありません。複合開発では、昼には商業施設やオフィス、夜には住居やホテルに人がいるため、昼夜での人口変化が小さくなります。これによって、インフラ整備の無駄を防ぐことができます。
メリット3:エレベーター利用の集中を回避
複合開発によるビルでは、エレベーター利用の集中を回避できます。オフィスビルでは、始業時刻や昼休みに、エレベーターの利用が集中します。また住居(マンション)では、朝・晩に利用が多いです。オフィスと住居では、ピークを迎える時刻がずれているだけでなく、上り・下りの方向が反対になりやすいです。したがって、複合開発によるビルでは、エレベーターの混雑が緩和されたり、エレベーターの必要台数が少なくなります。エレベーターの台数を削減すると、レンタブル比が高くなり、収益性が高くなります。(ただし、オフィスと住居とでは、エレベーターを完全に分ける場合が多く、効果が薄いかもしれません)
メリット4:電気・水道のピークシフト
電気代や水道料金は、最大の使用量が小さいほど、安くなりやすいです。また、空調の熱源や水処理などの設備も、最大の使用量が小さいほど、安くなります。

上の図のように、オフィス単体では1日の中で、人口の増減が激しく、複合開発では人口の増減が穏やかです。人口の増減は水の使用や、電気の使用、空調の負荷、水の処理などに影響します。人口の増減が激しいと、より能力の大きな設備を導入する必要があり、また設備の能力を多くは使わない時間もあります。一方で、複合開発では、能力の小さな設備を1日中フルに利用できます。よって、効率が良くなります。
複合開発のデメリット・課題
デメリット・課題1:面積・スパンの差
基本的にオフィスビルでは、柱の無い大空間が好まれます。一方で、住居では柱の数が多くても、問題になりません。加えて住居の方が、1戸あたり必要な面積が小さいです。つまり、オフィスと住居では、必要な面積とスパンが異なります。
また住居では、高層部が好まれ、低層部は人気が低いです。オフィスでは、比較的高層・低層は問題になりません。ですから、住居を高層部に、オフィスや商業施設を低層部に配置しようとします。しかし、柱の少ないオフィスが低層部、柱の多い住居が高層部に位置するのは、構造的にはあまり好ましくありませんし、コストがかかります。
森ビルが開発した、アークヒルズフロントタワーは、住居が低層部、オフィスが高層部の珍しい例です。構造的に合理的な配置を選択しつつ、利便性を売りに低層部の住居を実現しました。
デメリット・課題2:収益性
一般的に、オフィスと住居とでは、オフィスの方が賃料が高くなります。したがって、地価の高い街中心部では、住居がそもそも成り立たず、オフィス単体になりやすいです。
しかし近年では、複合開発によって、容積率の緩和が受けられる制度によって、複合開発が進めやすくなっています。


